ARTの地道メモ

ARTやARVsに関するメモ(メモしてるだけ)

一般的な抗レトロウイルス薬の投与開始後の2型糖尿病発症

Incident type 2 diabetes mellitus after initiation of common HIV antiretroviral drugs.
PMID: 33048874

[背景]
・PLHIVにおけるT2DMの有病率は米国、ヨーロッパ、オーストラリアで3~15%と推定されている。
・ART中のPLHIVはHIV陰性者よりもT2DMの有病率が高い可能性がある。
・米国の調査では12% vs 7%であった。
・NA-ACCORD試験では、INSTIはNNRTIよりT2DM発症する可能性が高かった(aHR:1.22)。PIと同様。
・RALはT2DMのリスク増加と関連していたが、DTGとEVGは関連していなかった。

[PECOT]
P:
OPERAコホートに含まれるPLHIV 29674名
DTG, EVG/c, RAL, bDRVの新規開始者⇒前糖尿病およびT2DMの有病率
ナイーブおよび治療中患者⇒発生率
・13歳以上
・糖尿病と診断されたことがない(T1DM,若年性糖尿病、妊娠糖尿病)
・ベースラインのVLが利用可能な人

E/C:該当しない
O:糖尿病前症(HbA1c5.7以上6.5未満等)とT2DM(HbA1c6.5以上)の発生
T:OPERA cohort(前向き収集)からの電子健康記録に基づく縦断的研究

[主な結果]
糖尿病前症
ART未経験 8%,ART療法中 11%
DTG14%, EVG/c11%, RAL7%, bDRV8%

T2DM
ART未経験 4%,ART療法中 10%
DTG10%, EVG/c8%, RAL17%, bDRV11%

T2DM発生率
ART未経験 1000人年あたり9[95%CI:8-11]
ART療法中 1000人年あたり13[95%CI:12-15]

レジメン別⇒有意な差なし
DTGと比較したART naive EVG/c⇒調整済HR:0.70[95%CI:0.47-1.05]
DTGと比較したART naive boosted DRV⇒調整済HR:0.53[95%CI:0.26-1.04]

DTGと比較したART experienced/suppressed EVG/c⇒調整済HR:0.96[95%CI:0.70-1.33]
DTGと比較したART experienced/suppressed RAL⇒調整済HR:1.17[95%CI:0.70-1.96]
DTGと比較したART experienced/suppressed boosted DRV⇒調整済HR:0.90[95%CI:0.57-1.42]

[結論]
ART未経験および経験PLHIVのDTGと比較して、EVG / c、RAL、またはbDRVでは2型糖尿病のリスクの増加は観察されませんでした。ただし、大規模なコホートにもかかわらず、イベントの数は少なく、リスクの差異を排除することはできません

[感想]
・レジメン間の差は、患者背景を考慮した処方選択の差である可能性あり。
・考察に記載あるが制限に注意。結果の誤分類の影響を受ける。空腹時血糖と認識したものが、実は随時血糖の結果であった、など。
・米国ではRALの処方が一般的でないため、サンプルサイズが小さくなってしまった。
HbA1cのモニタリングは引き続き慎重です。現在一般的なHIVART薬と高血糖の結果との関連を完全に理解するには、特にART未経験の参加者の間で、ART開始後の体重変化を徹底的に縦断的に評価する、大規模な観察研究におけるPLHIVの追加評価が必要です。とのこと。